すいしょうりん
ぱりん
ガラスのわれる音がした。
その音におどろいた希奈子がじぶんの足もとに目をやると、
まるで宝石のようにきらきらとなにかが光っている。
そっと足をあげて、なにをふんだのかたしかめようと希奈子はしゃがみこんだ。
ふまれてこなごなになったものは、ガラスのように見えるけれど、ちがうようにも見える。
希奈子はそれがなんなのか、わからなかった。
そっと手にとってみると、ちいさな破片は希奈子の手のひらでゆらゆらとあわい光をはなつ。
「きれい・・・。」
希奈子はじぶんの手のひらで光るものをじっと見つめた。
すると、その光はだんだんと弱まっていき、とうとう光らなくなってしまった。
「わたしがさわったから・・・?」
希奈子のむねがつきんと痛んだ。
―前におかあさんが言ってたっけ。
きれいなものにはふれちゃいけないって。
バラにトゲがあるように、きれいなものにふれるときずつくんだって。
希奈子は光らなくなったものをそっと地面にもどした。
足もとには他にもたくさん光をはなつものがおちている。
「まるでおかあさんの宝石箱みたい。」
おかあさんの大切にしている宝石箱を希奈子はいちどだけナイショで見たことがあった。
希奈子には宝石の名前なんてわからない。
それがどれだけ高価なものかもわからない。
だけど、あのとき、おかあさんのヒミツにほんのすこしふれたような、
そんな気持ちを希奈子は思い出していた。
ふたたび歩きだそうと顔をあげた希奈子は、はっと気がついた。
「ここ、どこ?」
アフジスカという世界に連れてこられたことはわかっている。
だけど、ここはモモ姫に案内された場所とは全然ちがっていた。
さっきまでの場所には家もあったし、ちょっと大きかったけれど植物だってはえていた。
今、希奈子が立っているこの場所には家もなければ木も花もない。
それらのかわりにあるものは、あたり一面きらきらと赤くかがやく水晶だけ。
そう、ここは水晶林(すいしょうりん)。
希奈子がふんづけたものはこの水晶たちからこぼれおちたかけらだった。
秋の真っ赤な紅葉のように水晶までも赤くもえている。
「紅葉するのは葉っぱだけじゃないのね。」
その景色を見ているうちに希奈子のこころがぽっとあつくなった。
こころがとくんとするたびに、あの音が聞こえてくる。
「この音楽、まるでわたしのこころがわかるみたい。」
希奈子は歩きはじめた。
音の正体をつきとめるために。
希奈子は知っていたのかもしれない。
この音がなんなのかわかったとき、本当の物語が幕をひらくのだと。
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アフジスカ〜猫と少女の秋空物語〜